「東大卒、大手一部上場企業にで新卒入社、40歳で最年少部長昇進、ある外資系取引先との会議、先方社長(欧米人)とnice to meet you、年齢は同じくらい、相手はすでに社長経験3社目、何が違うのか?」
こんな話を何年か前に聞いたことがあった。それ以来、「なんでなんだろうなー!?そんなにスペックに差があるんかね~!?」と考えていたわけだが、上司に勧められた本を読んでいたら、長らく自分の中で考えていた本件についての見解が書いてあった。
「経営戦略を問いなおす」
https://www.amazon.co.jp/dp/4480063226
本の後半の「人材」という章、書いてある内容をかいつまんでみる。
・企業社会ではなんといっても実績がものを言う
・稼ぐ人間が稼げない人間を食べさせるという基本的な構図があるため
・かくして花形事業の総帥や営業・開発実績のある人が管理職の階段を登る
・本当にそれでよいのか?
・実績のある人は経営者の適正に秀でているのか?
・答えはノーに決まっている
・実績と言っても営業や開発など実務における成果
・経営とはまったく別の世界であげた実績が経営者適性を示すバロメーターにはなるとは考えにくい
・そもそも実績は1人ではなく必ず背後には分業体制、黒子が存在する
・先人の努力、追い風・向かい風など、当人の力を正確に反映しているとは言えない
・実績があっても経営者としてはダメという「管理の達人」はいくらでもいる
・一方で、これという実績がなくても経営者として秀逸という人もいる
・実務の世界では経験に裏打ちされた知識の有無が圧倒的にものを言う
・だから年功が重視され、部長ともなると入社して20年は無いと苦しい
・ところが日本ではやっと部長という年齢で社長の座に就く人が欧米にはいる
・何が違うと言うのか?
↑↑ここ、僕の長年の疑問。そう、いや本当に何が違うんだ??
ちなみにここでは「若いベンチャー創業者」の話はしていません。
・日本では「管理」をマスターして「経営」という発想が根付いているがこれが違う
・管理と経営は別物、管理の上に経営が来るということはない
・守る経営と攻める経営では機能が違うので管理をマスターしても経営をできる保証はないし管理をマスターしなくても経営はできる
・双方敬意を持つのは大事だが経営をする前に管理を経験する必要はない
・実務は知識でするが、経営は違う
・知識の本質は過去の経験、経営は不確定な未来に向かって作用する、広い教養は役に立つが実務の知識は必ずしも必要ない
・経営に必要なのは事業観
あー、そういうことか。
つまり「経営」と「管理」は別物。経営をするにあたって必ずしも「実績」は必要ではないし、必ずしも「管理の達人」である必要はない、と、この著者は言っている。じゃあ何で欧米には日本と比較して、若い「経営者」が多く誕生しているのか?もうこれは「経営者にするための専門教育を施しているから」なんだろうなと思う。本の最後の章でこのあたりへの提言がされているが、それは長くなるのでまた次回。
実際、日本でもスタートアップのベンチャー企業創業者が20代ということ自体はそこまでめずらしく無い。がしかし、じゃあ彼らが「何かの領域の専門家・達人」かと言うとおそらくそれはないであろう。いや、そりゃそうだよね、25歳で起業して「ファイナンスの達人です!」と言ったって、ファイナンス一筋30年のコンサルタントにはフツーに考えて勝てるわけないですよね(センスの問題はあると思いますが)。なので、創業者はもちろん自身が全方位的に勉強をするのは当たり前として、会社の規模が大きくなるにつれ、経理、財務、購買、人事、開発、と「その道のプロ」を雇っていくのだと思います。
今MBAに通っているわけですが、そもそもMBAは「ビジネスを全方位的に学ぶ場」であるわけで、そういう意味で「経営」を学んでいるわけです、管理では無くて。
卒業後、この2年間の学びをどう活かしていくか?ということを考えた時に、この本の内容はなかなかに示唆に富み、考えさせるものでした。
別に現時点で社長になりたい!ということではないのですが、入学以降「経営」というものへの興味・関心が強くなっているのは間違いないな~、と感じるわけで。
なかなか面白い本でしたので、興味のある方は是非。